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【DX事例】ネスレ日本が実践する、真の顧客理解に基づいたマーケティング戦略と組織組成~DOORS -BrainPad DX Conference- 2023 テーマ別 企業DX対談~

公開日
2023.07.04
更新日
2024.02.22

本記事は、DX改革を行う上で非常に重要な要素である「顧客理解」について「ネスレ日本」様のお取り組みをご紹介しながら解説する内容が収録されています。顧客の”リアル”をデータ活用から見出すためのポイントを幅広くお話しいただきましたので、最後までご覧ください。

※本対談は、2023年6月5日から6月16日にかけて開催された日本最大級DXオンラインイベント「DOORS-BrainPad DX Conference- 2023」で配信されたものです。他にも収録されたコンテンツがあるので、読んでみてください。

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▼本対談の登壇者一覧

 

ネスレ日本の組織とブランドコミュニケーション

左からブレインパッド堀川(モデレーター)、ネスレ日本中通様

ブレインパッド・堀川 亮(以下、堀川) 「経営と現場をつなぐ顧客理解」をテーマに、ネスレ日本・中通様より「マーケティングの重要課題である顧客理解の捉え方とどのようにデータを活用しているのか」をお話しいただく予定です。では、中通さんの自己紹介とネスレ日本様のご紹介をお願いいたします。

ネスレ日本・中通  康太 氏(以下、中通氏) 中通と申します。デジタル関連の部署でデータを取り扱っており、デジタルの戦略設計やデータの活用戦略を立てる取り組みを行っています。

ネスレ日本は神戸に本社を設けており、取り扱いの商品としては、飲料やお菓子から食品、ペットフード等を展開しており、ネスレのパーパスが「食の持つ力で、現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」であるため、そのパーパスの実現にむけてビジネスを展開しているといえます。

堀川 家でもよくネスレ日本様のブランド・商品を見かけることがあり、「生活に根ざした商品展開を行っている」と感じております。現状、多岐にわたるブランド展開されていますが、ブランドコミュニケーションはどのように行っているのでしょうか?

中通氏 それをお話しするにあたって、組織の構造をお話しした方が分かりやすいので紹介しますね。弊社では基本的に、ブランドの担当がプロダクトの製造販売からプロモーションも含めて展開しており、例えばコーヒーのネスカフェであれば、飲料事業部が売上の責任を持っています。

そして、事業部をサポートする形で生産や営業といったいくつかの部門がありますが、その中の一つにデジタル部門もあります。デジタル部門は基本的に各事業やプロダクトを横断してデジタル面をサポートするので、例えばSEOやCMS導入など、プロダクト単体では推進できない、もしくは全体で推進すべき案件をサポートしています。

また、ネスレには3つのサイトがあります。写真の右側が一般的な企業サイトであり、コーポレート活動、採用やリリースの情報を出しています。真ん中は通販用のサイトで、左側がいわゆるメーカーのオウンドメディアです。このサイトは横断コンテンツを持ちつつポータルサイトの役割も担っているので、「ネスカフェ」や「キットカット」といったプロダクトのサイトもここに入っています。このポータルサイトの運営と、各ブランドサイトのサポートをデジタル部門が担っているような状態です。なお、SNSに関してもそれぞれアカウントを持っている各事業部へのサポートにも関与します。


ポータルサイトの分析の経緯

堀川 今回ブレインパッドではネスレ様のポータルサイトの分析をサポートしましたが、どのような経緯からこのオウンドメディアの分析実施を試みることになったのでしょうか?

中通氏 「まずファクトをいろいろ知りたい」が一番大きな動機でした。

これまで私は約20年間、とあるメーカーのスポーツドリンクを飲み続けてきました。もう何千本と飲んでいると思います。にもかかわらず、そのメーカーのサイトを訪問したことがないのです。

ロイヤリティが高い顧客であるはずなのにメーカーのサイトを訪問したことがない自分を考えたときに、ネスレのサイトに来てくれている人達は誰なのか?何を求めてきているのか?そういった顧客の行動や背景、感情を知りたかったのです。つまり「ファクトを洗い出す」ためにブレインパッドに分析のお願いをしたのが出発点でした。

分析から見えたファクトと顧客理解のステップ

堀川 なるほど。ではどのように分析に取り組み、結果的にどのような分析結果が得られましたか?

中通氏 例を挙げると、顧客のサイト来訪に対するKPIは「ブランド理解」ですが、「ブランド理解」を数値化するのは非常に難しい。そのため、以下のような分析の過程をとりました。

ネスレ日本が伝えたいメッセージが集約されたページを
・どれくらいそのページを閲覧して
・どれくらい滞在してくれて
・どれくらいのページを回遊して見てくれたのか
こういった行動を仮のコンバージョンポイントとして設け、コンバージョンに至った人の属性や情報を深掘りするような分析。これは非常に意義のある分析でした。また、そういったコンバージョンの高い顧客は会員登録のある顧客ということは自明でしたが、それをもう少し深く見て、

・何がきっかけで会員登録に至ったのか
・最初にどういう行動をすると会員登録に至りやすいのか
・会員登録する人としない人の差分は何があるのか

といったことも見て頂きました。「ネスレ日本を理解してくれる顧客はどういう人なのか」という顧客理解に深みが出ましたね。

もちろん他にも

・メルマガ配信の最適なセグメントは何か
・広告出稿時の最適なLPの内容は何か
・離脱ポイントはどこか
・特定コンテンツのアクセスが減っているが原因は何か

こういった分かりやすいアウトプットもブレインパッドからいただきましたが、それよりも重要な基礎分析に力を入れていただいたと思います。

堀川 基礎分析は最初に行う取り組みで、ファクトの基礎になる数字を固めて作業を進めていきます。これは後続の分析をしていく土台になる部分ですよね。集計方法の定義をお互いに確認したり、ここで得られるデータにはどういう意味があって、どこから発生しているのか、といった擦り合わせをインタラクティブに進めていけたと思います。

ちなみにネスレ日本様は、これまでお話しした「サイト内分析」だけでなく、サイト外分析である「ヤフーさんの検索データ分析」もされたと思います。これにはどのような狙いがあり、どのような分析結果が得られましたか?

中通氏 サイト内にいる顧客分析は、ブレインパッドに協力いただきながら進められました。一方で「サイトに来ていない顧客心理」も把握する必要性を感じたのがきっかけです。
例えばSEOの世界で言うと、ユーザーが何かしらのキーワードで検索した時にネスレのサイトが検索結果1位を獲得したとしましょう。そこで1位のネスレのサイトがクリックされる確率はせいぜい20%程度であり、80%はネスレのサイトに来ないことになります。

そうなると、今サイト内で行っている分析対象は20%の顧客になるので、ネスレの持っているコンテンツに関係があることを検索したのに、訪問されなかった大多数の80%のユーザーに対する理解は無視できないと考えました。そこで検索サービスを主力とするヤフーさんのお力をお借りして、デジタル上での顧客の感情や行動を理解していこうと決めたのです。

結果的に「ユーザーが求めている情報はブランドごとに異なる」ことが分かりました。例えばコーヒーでは「通販」を求めているユーザーが多いことが分析できたのですが、そうするとネスレ日本のコーヒーのサイトに訪問したユーザーは「通販に興味がある」属性の方が多いことが分かり、自社データを分析する際も「通販に興味がある人のデータ」という前提をもって数字を見ることができます。

だからデータの見方にも深みが出ますし、ミスリードを防ぐことができるため、「前提としてどういう顧客なのか」を理解するのに役立ったと感じていますね。

数字の裏側にある顧客の心理を探求する

堀川 ここからは中通さん個人のお考えについておうかがいさせてください。一緒に分析をさせていただきながら思ったのですが、中通さんは分析結果の数字の解釈に対して鋭い観点をお持ちですし、数字の裏側を理解しようとされる姿勢を肌で感じていました。

そんな中通さんが考える分析の「役割」とは何だと思いますか?

中通氏 私のこれまで所属した企業は全てBtoC事業なので、基本的に「数字」=「顧客の行動の結果」でしかないと思い続けています。数字の変化は顧客の行動の結果であり、その行動に至った過程には、何かしらの感情変化や習慣的な変化のトリガーがあったということになります。そこを数字から読み取ることが重要だと思っています。

分かりやすく例えると、「頭が痛い」ときにどうするかといえば、まず広く健康診断を受けます。診断結果の数字が羅列され、数値の異常がある部分に対して、お医者様が専門的見地から病気を推定し、詳しい検査をもう一回することになります。その結果から本当の頭痛の原因が分かり、処方箋を出す、という流れだと思います。

しかし、もし最初に「頭が痛い」から頭痛薬を処方して終わってしまったとしたら、根本的な問題解決にならずに、薬が切れたら頭痛が再発しますよね。

これが分析も同じだと思っています。

マーケティング的に分析をするというのは、つまり「顧客の課題を解決する」ことを指します。もっと言うと「課題つまり問題が何かを突き詰める必要がある」と言える。

そのためにはまず、全体の数字を見ることからスタートします。分析というよりも数字の抽出です。抽出した数字を並べてみれば、その数字になっている要因や顧客の行動を仮説で考えることができます。

仮説を立てる際も闇雲にではなく、仮説通りだった場合は次取るべき行動や施策は何か、仮説通りでなかった場合は次に何を調べなければならないのか、こういった先のことを頭に置きながら分析できると、効率的かつスピーディーに分析を進められると思います。

そうしながら最終的に「一番それらしい仮説」に対して、より分析を深めていく。この流れを言い換えると、問題点の発見→問題点の背景を仮説立て→課題の発見→課題の要因分析→取るべき施策の発見の分析になるので、根本的な問題解決に結びつくと思っています。

堀川 仮説を先に出しておくことが重要ですよね。

中通氏 まずは事実を知り、理解する。そして顧客の行動や心理に基づいて仮説を立て、それに対してどのような施策を打てば顧客に刺さるのか。こういった思考が分析を深めることに役立つと思います。

逆に、抽出した数字ベースで思いつきの施策を実行するのは、科学的なマーケティングにはならないです。
例えば「売上が下がっているから売りの上がる値引き販促しよう」と単純に考えるケース。これは科学的ではないですし、PDCAにも繋がりません。
言い換えると、顧客理解を深めないし、会社としての知的財産や資産になりません。
施策の精度を高めたり、マーケティングのレベルを会社として上げていくには、「お客様のことを考えて、お客様を分析し、そこから仮説を立てて実行していく」ことが必要だと思います。

データに基づき顧客心理を科学的に把握する

堀川 顧客理解を深めるという観点から「科学的」というキーワードに繋がりましたが、これは一つの重要なポイントだと思っています。

科学は多くの事象を観測をしたり、実験によって知識を確立したりするものです。これをマーケティングに当てはめてみると、施策の反応と効果を検証し、自社独自の顧客理解に繋がり、発見・知見が確立されていくと考えています。

施策の実施だけを検討するのではなく、施策実施に至るまでの「過程」が大事ですよね。施策単体の成否だけを見つめるのではなく、仮説に基づいた狙い通りの施策だったのか、狙いと違った場合はどこが違ったのかを把握し、PDCAを回していくことが「組織としてできる」状態がより重要だと思いますし、今後もそこに焦点を当てて支援していきたいです。

デジタル戦略推進におけるデータ活用とは

堀川 ここからは、デジタル戦略の推進の話についてお聞きします。中通さんは、今オウンドメディアを中心にデジタル戦略を推進する立場にあり、ブランドのコミュニケーションやECによる直販も行っていますよね。

こういったデジタル戦略を促進していくにあたって、データを活用していくための課題はありますか?

中通氏 データを活用するに至るまでには、次のようにいくつかのフェーズがあると思います。

  1. データを溜め、整形する
  2. 整形したデータを抽出する
  3. 抽出したデータに対して仮説を立てる
  4. 仮説に対して分析をする
  5. 活用する

この一連の流れを企業の中で一人が全て行うことは稀で、多くの場合は分担して担当者を配置し、「組織」になるのですが、ここで問題が起こることがあります。

例えば分析を担当する人間と、施策を担当する人間がいるとした場合、それぞれの業務を洗練させようとします。高みを目指し「高度なことを行おうとする」のです。もちろんこれは当然ですし、素晴らしいことです。

高度なことというと、最近ではAIがありますよね。仮に、分析担当者がAIによって精度も再現性も高い分析アウトプットを生み出せたとします。
一方で施策の担当者は、実際に顧客がどういうインサイトを持っていて、どのインサイトに対してどういうメッセージを出せば顧客が動くのかを考えたいと思っています。

分析側はAIを使って効率的に、正しく精度の高いアウトプットを出したものの、アウトプットまでの経緯がブラックボックスになってしまうため、「なぜそのアウトプットになったのか」という施策側にとって重要なインサイトを考察するための素材が得られにくい状態になってしまいます。
当然、インサイトを外した施策はヒットの確率を下げますよね。

こういった分業によって、双方がせっかくいい仕事・いい分析をしているのにいい施策に繋がらないのが課題になると思います。

これは決して「AIが悪い」とか「AIを扱う分析側や施策側が悪い」とか、そういうお話ではありません。必要なのは分析側と施策側の接着点を作ること。

どういう目的でどういうアウトプットが欲しいのか、それに対して必要な分析は何なのかを導けるような、いわゆる「通訳者」の役目の人たちがいると、分析から施策までスムーズに実行できるかと思います。

同じようなことがデジタルマーケティングの世界でもよく起きていて、「IT部門」と「ビジネス部門」が、お互いの共通言語でうまくコミュニケーションができず、DXプロジェクトがうまく進まないというケースが昔からいろんなところで起こっていると思います。

堀川 本当にその通りですね。出発点は同じだったはずなのに、自分の仕事の結果をさらに出していきたいという思いが強すぎて、精度そのものを追い求めてしまいがちです。そういう背景もあり、ブラックボックスの話もよく出てきます。

なのでブレインパッドが支援する際は「分析過程がブラックボックスになってでも、精度を高めますか?それとも、精度は高められないかもしれないものの、分析過程の中身が分かる状態で分析を進めていきますか?」というコミュニケーションを取るようにしています。

中通さんがおっしゃったように「インサイトや中身が重要」という場合には、精度よりも中身を選んで組み立てていく方が結局うまくいくことはよくありますよね。

中通氏 DXプロジェクトでは、最終的なアウトプットと期待値が目に見えるため、プロジェクトがうまくいったのか、そうでなかったのかが明確に把握しやすいです。
一方で分析の場合は、分析結果を使って施策展開まで出来てしまうので、うまくいっているのかどうかが見えにくい。「接着点がうまくいってなくてインサイトの考察精度が低いから、いい施策ができなかった」という事態が実は起きているにもかかわらず、それに気付けない状態になっているケースがあるのではないかと思います。ここにデータ活用の難しさがありますね。

データ活用推進における課題解消のアプローチ

堀川 そうですね。一人で取り組む場合には起きない問題ではあるものの、組織的にデータ活用推進しようとする場合に必ず遭遇する課題だと思います。そういった役割の違いによる期待値やアウトプットのギャップを解消するために、中通さんはどのような取り組みをされて来ましたか?

中通氏 ギャップを解消するには組織が同じ方向を向くことです。分析部門・施策部門それぞれ立場が異なっていても、顧客の心を理解して、顧客の心に対してワークするような手法を取ろうと動けばいい。そんなことは当たり前なのですが、なかなかできないのですよね。

なぜできないかというと、「顧客の心を理解しよう」という思考が、自分たちの業務・KPIとどのように繋がっているのかが理解しにくいからだと思います。目の前にある仕事を精いっぱいこなし、自らに課せられたタスクに対し一生懸命に取り組む。ただ、それが結果的に部分最適・個人最適な業務に優先的に走っていることになっている。これは現場としては普通のことで、自分の仕事を一生懸命頑張ることは何も間違ってはいません。

こういった前提がある中で、問題解決の鍵を握るのは「マネジメント」にあると私は考えています。
私が今お話ししてきたような問題があることをまずマネジメント側が理解し、顧客の方を向いて仕事をするよう戦略とKPIの設計を行い、戦略をきっちり現場まで落とし、理解をしてもらうことが重要です。

戦略が正しい方向にあれば、多少How(施策)が間違っていても大怪我することはありません。

よく会議で「アレがいい」「いや、コレの方がいい」といったHowの応酬議論がありますよね。戦略があれば施策の優先順位が自ずと決まるので、そういう議論がそもそも起きないはずです。戦略設計と理解、そして実行の徹底が、部分最適を正すのに有効な手段であり、結果的に、組織が同じ方向を向いていくのではないかと思います。

期待値とアウトプットのギャップを解消する工夫

堀川 施策の良し悪しの「基準」は人によって違うので、筋が通った戦略に基づいてHowを決めるのが大事ですよね。それが顧客理解を起点にすると同意であり、そのように取り組んでいくうちに組織全体が同じ方向に向くことができることも理解しました。

ただ、そこからさらに踏み込むともう一つの課題があると思っています。組織全体で向かう方向性が分かっていても、それを目の前の業務にうまく落とし込めず、今度は「組織が求める期待値」と「現場のアウトプット」のギャップが生まれることはありませんか?この点において、工夫していることがあれば教えてください。

中通氏 方向性が合っているにもかかわらず期待値とアウトプットが逸れる原因はいくつかあると思いますが、現場側で起こる要因としてありがちなのが、優先順位の付け方があげられると思います。

とにかく何かをしなければ、と、目についたものから対応してしまうと、期待値とのギャップが生まれがちになると思いますが、全体を見た上で想定される最も重要な問題点を突き詰め、深堀し、分析していくと、自然に優先順位が付きます。

逆に、全体を俯瞰した上で出したアウトプットに対して「期待値と違う」と言われたら、「いや、全体を見渡すとこの分析はこれくらいのインパクトがあってこれくらい重要なことなんです」と説明ができて、期待値とアウトプットの擦り合わせができますよね。場合によっては期待値側がそもそも間違っているかもしれない。全体から落としていくことを意識すれば、自分たちが今見ているファクトがどういう影響を持つのかを理解しながら議論できるようになります。

さらにいうと、優先度の低い分析やファクト出しが不要になり、本来の業務に集中できますし、「とりあえず全てのデータを出してみよう」ということをして、本当に重要なデータを見失う、というような失敗も避けられるようになります。

このように全体から落としてくことができれば、必要なポイントだけを分析することになるため、見落としを防ぐことでき、業務としての効率も非常に上がっていくと思います。そうしていくうちに、ギャップを埋められるようになるのが理想ですね。

堀川 全部のデータを出したり、闇雲な接着点を作ったりするよりも、優先度や全体の中で影響度が大きいファクトを選んで、そこを起点にすることが重要ですね。

先ほどの健康診断のような全体分析をしても、問題点が明確に出ないこともあると思います。そんな中で現場で業務に携わっている人々がファクトを出すタイミングから仮説を立て、仮説に基づいて検証していく分析のアプローチがカギを握りますし、それが接着点を作るという意味でも有効だと感じました。

ネスレ日本におけるブレインパッドの役割

堀川 先ほど中通さんから「役割の違いによって生まれる期待値とアウトプットのギャップ」というお話がありました。

ブレインパッドは外部として顧客支援を行う立場ですが、中通さんから見てブレインパッドはどのような役割を発揮できたかおうかがいしてもよろしいでしょうか?

中通氏 それはもう、非常に大きな役割を果たしてくれました(笑)。冒頭で申し上げた通り、ネスレ日本としては「とにかく顧客のことを理解したいからファクトを知りたい」が第一の目的がありました。

そんな中、ネスレ日本の要件定義に対してブレインパッドは、目的に沿った「逆提案」を追加で行ってくれたことで、「もともと知りたかったものより強化されたファクトやアウトプット」を返していただいたと感じました。

この「逆提案」は、施策の展開までを想定した提案になっていたため、結果的にスムーズに抽出・分析までできました。

先ほど申し上げた「分析側と施策側がうまくかみ合わない」ところの「接着点」の役割も担いながら、分析から施策までスムーズに実施してくれたのは大きかったです。

ネスレ日本の意図を汲んだ上でマニアックな分析手法を取ることになった場合も、何がどのようにマニアックなのかを明確に説明してくれたため、ホワイトボックスの状態で分析から施策の展開まで全て進められたことに価値がありました。

意図を汲むということは非常に難しいですが、最初にネスレ日本として伝えていた「顧客のことを本質的に知りたい」という視座を、ブレインパッドも同じように持ち続けてくれました。

また、ブレインパッドとの日々のミーティングでは「暗黙知を共有することができている」と思っていました。これはとても重要でした。

定例ミーティングで出される資料を作るために、そこまでにたくさんの小さな意思決定が要所要所で発生していたと思います。その小さな意思決定の積み重ねが、ネスレ日本が思っている方向と異なると、最終的に会議で意見がぶつかってしまいます。

暗黙知を共有できたことで、小さい意思決定を適切にネスレ日本が思っている方向に進めてくれたのではないかと思いました。結果的にスピーディーにプロジェクトを進められ、お互いリソースを無駄なく進められましたし、クオリティの高い分析結果が得られました。

堀川 「クライアントから依頼された通りの分析結果を支援会社がアウトプットできない」ケースは結構珍しくありませんが、ただそこで「代わりに何をアウトプットすれば良いのか」を、クライアントが果たしたい目的に沿って考える意思決定が、今振り返ると重要だったと思います。

思い返してみると、何回か議論を行うにつれて、だんだんブレインパッドもネスレ日本様の一メンバーのような立ち位置・目線でお打ち合わせさせていただいたように思います。

中通氏 確かにブレインパッドのご担当の方も「昨日、ECサイトでネスレ日本様の商品を購入して、早速飲みましたよ!」とか「メールマガジン登録したらこんなメール届いています!」など、実際に手に触れながらコミュニケーションを取ってくれました。

堀川 ブレインパッドに期待する役割やアウトプットがもうやる前から、明確だったのは大きいですね。分析の設計が進みやすかったり、分析結果を報告しやすかったり、最終的に施策をプランニングするところまで含めた上でポイントを捉えた議論ができていたのは良かったと感じています。

まとめ

堀川 さて、締めの時間が迫ってきました。「経営と現場をつなぐ顧客理解」をテーマに、顧客理解のための分析に関するお話をお聞かせいただきました。

顧客を理解して顧客の課題を解決するのが、ネスレ日本様の取り組みです。そのためには、分析からファクトを明らかにすることが、二つの接着点になるというお話がありました。

一つは、戦略と実行を繋ぐ接着点です。なかなかうまくいかないところですが、そこに分析が役に立つということでした。もう一つは、役割の違いを乗り越えて、同じ方向を向くために接着点が必要になるということでしたね。定量的な分析には、分析「接着点を作る」役割もあるというお話でした。

分析を支援するブレインパッドとしては、「顧客理解に取り組む企業の皆様と同じ目線を持って、データに基づく仮説を検証していく立場に寄り添って取り組んでいきたい」と改めて思いました。

中通さんは本日を振り返ってみて、いかがですか?

中通氏 私は「ファクトに勝るものはない」と思っています。冒頭で申し上げた通り、BtoCにおける数字は顧客の行動を写します。これは強力な武器です。

本日お話ししたことが私たちの現場でも全部できているとは思わないです。分析から実行まで一気通貫して行うにあたって直面する課題というのは、現場・マネジメント・組織全てが重なり合った課題です。一つひとつ地道に問題を解決していく他ありません。

堀川 顧客の理解が起点になり、こういった取り組みを行いながら一つずつ課題解決していくことに繋がっていく動きが理想的だと私も思いました。今後も顧客の課題を解決する取り組みを応援していきたいと思っております。

では、本セッションを終了したいと思います。本日は中通さん、貴重なお話ありがとうございました。そして、ご視聴いただいた皆様ありがとうございました。



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株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

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