数理最適化とは?機械学習・AIとの違いやビジネス活用事例をわかりやすく解説

公開日
2023.07.25
更新日
2026.05.20

本記事では「数理最適化」の概念やビジネスにおける役割についてわかりやすく解説するとともに、数理最適化のビジネス活用事例や活用までの大まかなフローも紹介します。

数理最適化はビジネスの意思決定や業務効率におけるボトルネックを大幅に解消し、事業成果の最大化に貢献するデータ活用技術の一つです。企業のDX化においてよく応用されます。

【関連】
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは?今さら聞けない意味・定義・事例をわかりやすく解説【2023年最新版】

特に、物流・輸送業界や製造業、航空業界といったサプライチェーン・ロジスティクスに関連した領域で、数理最適化はよく取り入れられています。

本記事を読むことで、数理最適化の全体像を体系的に理解した上で「ビジネスに導入すべきかどうか」をより判断できるようになると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

1111111

数理最適化とは?分かりやすく解説

数理最適化とは、数学的な手法やアルゴリズムを用いて、与えられた制約条件の下で特定の目的関数を最大化または最小化する問題を解決に導く計算技術です。

かみ砕いて表現すると、「特定のルールがある中で、成果を最大化する方法は何か」を追求するのが数理最適化だと言えます

この数理最適化はあらゆるビジネスに応用されており、利益の最大化や業務の最適化を実現しています。


数理最適化の身近な例やビジネス応用例

数理最適化の身近な例として「配送業界の配送ルート」が挙げられます。 一日に多くの荷物を運ぶ配送車は、できる限り無駄のないルートを走る必要があります。ここに数理最適化を活用することで、効率的な配送ルートの最適解を導き出せます。

運送業界では、時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)の適用を契機に、慢性的なドライバー不足が深刻化しています。配送業務の効率化が急務となるなか、データサイエンティストなどの専門家が数理最適化技術を応用し、課題解決を図っています。

その他のビジネス応用例としては、以下のようなものがあります。

  • Webやポータルサイトを統合した年間の広告予算配分計画
  • アミューズメント施設におけるチケットの発券計画
  • 顧客の注文を満たすための、工場ラインの生産・輸送計画
  • 需要予測をもとにした、発注時の在庫数削減計画
  • 需要予測をもとにした、売上最大化のための商品価格計画

このように、あらゆる場面での最適化計画を算出できる技術です。

【関連記事】
【社員が解説】データサイエンティストとは?仕事内容やAI・DX時代に必要なスキル
数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~
配送ルート最適化プロジェクトの現場実装
「2024年問題」による配送業務への影響の定量的な評価
データをアクションにつなげる技術「数理最適化」とは?

「数理最適化」と「AI」「機械学習」との違いは?

ここでよく混同される「数理最適化」と「AIや機械学習」との違いについて補足しておきます。

まず、前提として「数理最適化」と「機械学習」は、「AI」に包括される概念です。いずれもAIと表現しても問題ないですが、「数理最適化」と「機械学習」は異なる概念になります。下の図をご覧ください。

「数理最適化」と「AI」「機械学習」との違い
「数理最適化」と「AI」「機械学習」との違い

概念を整理すると、両者には以下のような違いがあります。

  • 機械学習(予測): 膨大なデータからパターンを学習し、未知のデータに対して「予測」を下す人工知能です。
  • 数理最適化(意思決定): 問題の構造や数学的な制約に基づき、目的を達成するための「最適解」を導き出します。

両者は対立するものではありません。ビジネスにおいては「機械学習で予測し、数理最適化で意思決定する」という連携が強力な武器となります。

日常生活の「雨」を例に、両者の役割の違いを見てみましょう。

  • 機械学習の役割: 「明日は60%の確率で雨が降る」と予測する
  • 数理最適化の役割: 「傘を持って歩く」「車で移動する」などの選択肢から、一日の満足度が最も高くなる行動(例:車で移動すべき)を決定する

このように、機械学習による「予測」だけでは人の判断が残ります。一方の数理最適化は、最終的に「取るべきアクション」までを決定してくれます。

数理最適化の実行によく使用されるプログラミング言語「Python」

数理最適化に使用される代表的なプログラミング言語は複数ありますが、中でもよく用いられるプログラミング言語は「Python」です。Pythonには多くの数理最適化ライブラリが存在するからです。

特に近年は、最適化問題の最適解を得るために用いるソフトウェア(数理最適化ソルバー)の進化が激しく、その選び方がとても重要です。弊社はあらゆるソルバーの検証を行っており、プロジェクトに応じて使い分けています。


「数理最適化による課題解決」と相性が良い業界・ビジネス

数理最適化の概念や役割について理解できたところで、ここからは「数理最適化がマッチする業界やビジネス」について紹介します。数理最適化をビジネスに導入するかどうかの判断材料になるはずです。

輸送・物流業界

輸送・物流業界のビジネスでは数理最適化がよく活用されます。主な課題・活用領域は

  • 輸送ルート最適化
  • 配送スケジュール最適化
  • 在庫最適化

です。効率的なルートやスケジュールを算出し、過不足のない在庫管理を実現できるようになります。結果的に輸送コストの最小化につながります。

製造業

製造業にも数理最適化はよく応用されます。主な課題・活用領域は

  • 生産計画最適化
  • 生産ラインのスケジューリング最適化
  • 資源割り当て最適化
  • 品質管理最適化

です。生産効率を向上させ、コストを削減するための意思決定に活用されます。

【関連記事】
製造業DXとは?導入の進め方と4つの成功事例をご紹介

エネルギー業界

エネルギー業界で数理最適化がよく活用される課題・領域は

  • 電力供給最適化
  • 発電スケジュール最適化
  • エネルギーネットワークの最適設計

など。エネルギーの供給安定性やコスト効率を向上させるために活用されます。

ロジスティクス業界

ロジスティクス業界で数理最適化が活用される課題・領域は

  • 倉庫配置最適化
  • 在庫最適化
  • 配送ルート最適化

など。効率的な物流管理を実現し、コスト削減を図ります。

航空業界

航空業界で数理最適化がよく活用される課題・領域は

  • 航空機のスケジュール最適化
  • 機体割り当て最適化
  • クルーのスケジューリング最適化

など。航空機の運用効率や顧客満足度を向上させるために活用されます。

ファイナンス業界

ファイナンス業界で数理最適化がよく活用される課題・領域は

  • 投資ポートフォリオ最適化
  • リスク管理
  • 取引戦略の最適化

など。投資リターンを最大化するために応用されることが多いです。

数理最適化のビジネス導入事例・具体例

ここからは、数理最適化の技術を用いてビジネスに活用された事例をご紹介します。

※数理最適化に限らず、こうしたDXによる事業グロース事例は数多くあります。数理最適化以外にもDX事例を参考にしたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。

【関連記事】
【業界別DX事例26選】成功事例から学ぶビジネス革新の方法論

【事例1:ソフトバンク株式会社】LPガス容器の配送最適化サービス「Routify」

ソフトバンク株式会社は、LPガス容器の配送を最適化するサービス「Routify(ルーティファイ)」を開発しました。この効率的な配送計画を実現する裏側には、数理最適化技術が活用されています。

技術の導入により、「どこからどこまでの荷物を」「何日の何時までに運べば最も効率的か」が明確にわかるようになりました。

【関連記事】
【DX事例】社会インフラ課題をデータ活用で解決する、ソフトバンクの新サービス・「Routify」開発秘話~DOORS -BrainPad DX Conference- 2023 テーマ別 企業DX対談~
ブレインパッド、LPガス業界のDXを実現するソフトバンクの新サービス開発を支援

【事例2:キリンビール株式会社】サプライチェーンマネジメントの高度化

キリンビール株式会社様は、需給業務の改革プロジェクト「MJプロジェクト」を推進しています。複雑な需給業務が「担当者の能力や知見」に依存している属人化を課題と捉え、DXによる解決を決断しました。

取り組みのひとつである「製造計画のアルゴリズム開発」に、数理最適化を活用しています。これにより「どの工場で」「何の製品を」「どれくらい製造すべきか」を自動で導き出し、サプライチェーンマネジメントの高度化を図っています。

【関連記事】
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは?成功事例や必要性・メリットをわかりやすく解説
【DX事例】「未来の需給」をつくる、キリンビール「SCM(サプライチェーンマネジメント)」の挑戦~DOORS -BrainPad DX Conference- 2023 テーマ別 企業DX対談~
ブレインパッドとキリンビールが、DXを活用したSCMの変革を推進する「MJ(未来の需給をつくる)プロジェクト」を始動

数理最適化によるビジネス課題解決に必要な専門技術や人的リソース

数理最適化の導入にあたっては、以下のリソースや専門知識が必要です。

  • データサイエンティスト、データエンジニア
    最適化モデルの構築やソルバーの選定、結果の解釈を担う専門家です。

【関連記事】
データエンジニアとは~役割、他のエンジニアとの違いなど~

  • データの収集と整理
    需要予測や制約条件など、問題の定式化に必要なデータが揃っていることが大前提となります。
  • コンピューティングリソース
    大規模で複雑な計算を処理するための、クラウドサービスや高性能なハードウェアが必要です。
  • 数理最適化ソフトウェア
    モデルを解くためのソルバー(AMPL、Gurobi、CPLEX、Pyomo、PuLPなど)を利用します。
  • プロジェクトマネージャー(PM)
    ビジネス上の課題を特定し、プロジェクトの進行管理やコミュニケーションを統括します。

【関連記事】
【シリーズ】データ分析プロジェクトの「プロジェクトマネージャー(PM)」に求められる役割 CASE1:データサイエンティスト・田村潤

数理最適化をビジネス適用するまでの大まかな流れ(一例)

実際のプロジェクトにおける、導入の大まかな流れは以下の通りです。

  1. 問題の特定と定義: 物流ルートや生産計画など、対象領域と達成したい目標(目的関数)、制約条件を定義します。
  2. データ収集: 過去の販売データや顧客データなど、モデル構築の種となる情報を集めます。
  3. 数理モデルの構築: 収集したデータをもとに、目的と制約を数学的な数式(モデル)で表現します。
  4. 最適化ソルバーの使用: 構築したモデルをソフトウェアに入力し、目標を最大化または最小化する「最適な解」を計算します。
  5. 最適解の探索と評価: 導き出された解をビジネスの現場に当てはめ、戦略の立案や意思決定を行います。
  6. 結果の解釈と見直し・調整: 結果が予想と異なる場合はステップ3に戻り、モデルやデータを見直して改善を図ります。

数理最適化のビジネス実装におけるポイント

数理最適化のビジネス実装が本格的に決定した際は、成功ポイントについて知っておきましょう。

以下の記事では、弊社現役データサイエンティストによってまとめられた「数理最適化のビジネス実装における成功ポイント」について記載されているので、あわせてご覧ください。

【関連記事】
数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~

数理最適化のビジネス実装における課題

事業グロースに期待が込められる数理最適化ですが、ビジネス適用にあたっての懸念点や課題もいくつか存在します。データがなければそもそもプロジェクトを始められないことや、要件によっては時間や工数が膨大であること。

詳しくは以下の記事で解説していますので、あわせてご覧ください。

【関連記事】
数理最適化のビジネス導入プロジェクトで直面しがちな3つの課題

進化し続ける数理最適化

近年、数理最適化は進化し続けており、ビジネス課題の解決領域を大きく広げてきています。実際、弊社ブレインパッドでも数理最適化の解決事例は増えてきている状況です。

また、数理最適化の解決領域が広がっていることにより、数理最適化を取り扱うデータサイエンティストの「スキルセットの拡張」にもつながっています。つまりデータサイエンティストの活躍領域も広がっているのです。

これは「汎用ソルバーの劇的な進化」に基づくお話になるのですが、このあたりは少し専門的・技術的なトピックになるので、以下の記事で詳しく解説しました。数理最適化がクライアントにもベンダー側にも活用されやすくなった背景について、理解を深めたい方はご覧ください。

【関連記事】
数理最適化の新時代到来~最適化→予測でDXは加速する~

まとめ:ビジネス成果の最大化を実現する技術が数理最適化

まとめると、「あらゆるデータや条件のもと、成果を最大化させるための意思決定を導き出してくれるのが数理最適化である」というお話でした。

属人化された業務領域や直感に基づいた施策など、定量的な根拠に紐づいていないような課題を解決・改善したい場合は、数理最適化のようなデータ活用技術を活用し、DX化を推進すると良いでしょう。

【本記事で紹介した関連記事】


このページをシェアする

あなたにオススメの記事

株式会社ブレインパッドについて

2004年の創業以来、「データ活用の促進を通じて持続可能な未来をつくる」をミッションに掲げ、データの可能性をまっすぐに信じてきたブレインパッドは、データ活用を核としたDX実践経験により、あらゆる社会課題や業界、企業の課題解決に貢献してきました。 そのため、「DXの核心はデータ活用」にあり、日々蓄積されるデータをうまく活用し、データドリブン経営に舵を切ることであると私達は考えています。

メールマガジン

Mail Magazine